コラム
2020年度末に向け FIT制度の見直し は施行されるのか?
2018年5月20日、経済産業省のHPにて、総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会の議論の中間整理資料がアップされました。
その中で、「FIT制度を2020年度末までに見直す方針」という記述があります。
FIT制度の見直し
今後は、欧州など先行する諸外国における制度の動向も参考にしながら、入札制、卸電力市場への直接販売、導入量や時期に応じて自動的に買取価格が低減する仕組み、卸電力市場(前日・当日市場)や電力システム改革に伴い整備される市場との連動等のツールを組み合わせて、マーケットベースでの自立的な普及への移行を促す仕組みを検討していくべきである。
その際、太陽光発電や風力発電のように、一定程度導入が進んでいる、又は導入が拡大していくことが見込まれる段階に至っているような「急速なコストダウンが見込まれる電源」と、地熱発電や中小水力発電、バイオマス発電のような「地域との共生を図りながら 緩やかに自立に向かう電源」といった電源ごとの性質の違いに応じ、それぞれに適切な制度を構築していく必要があり、FIT 法附則第 2 条第 3 項に規定された FIT 法の抜本見直しの期 限(2020 年度末まで)に向け、検討を進めていくべきである。
出典:総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会中間整理 P7
2012年 7月にFIT制度が導入され、太陽光発電の導入は急速に進みました。
一方で、発電コストは国際水準と比較しても依然高い状況にあり、国民負担の増大をもたらしています。
この国民負担を何とか下げるために、FIT制度を見直し、買取価格が高かった時代の低圧案件をなくしていきたいという狙いが見える内容ですね。
FIT 制度で先行する欧州においては、再生可能エネルギーの普及拡大の裏側で国民負担の増大が進む中、直近期間の導入量に応じて価格低減率が変動する Sliding-scale、市場価格で の取引にプレミアムを上乗せして支援する Feed-in Premium や卸電力市場への直接販売制、買取価格を競争入札により決定する仕組みを導入するなど、再生可能エネルギーを市場競 争の中で自立的に普及させていくための制度改正を重ねて来ている。
そうした中で、他の電源と同等かそれ以下の入札価格を付ける太陽光発電や風力発電プロジェクトが出てくるなど、FIT 制度から自立する事例が見られ始めている。
出典:総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会中間整理 P6
エネイチの見解
上記にあるように、日本国内に比べ発電コストの低い欧州のやり方に徐々に合わせていく方向の様です。
しかし、本当に見直しが施行されるかどうかは正直微妙な所ではないでしょうか。
FIT制度見直しと言えば、小型風力発電の買取価格の大幅見直しが記憶に新しいですが、本当に施行されれば、やはり業界関係者や太陽光発電所を既に所有されている方々から猛反発を受ける事が予想されますので・・・。
私たちも、動向を見守っていきたいと思います。
【追記情報】未稼働案件のFIT価格、見直しの考えを発表
【2018年10月】
FIT制度に関して、導入当初に認定を受けた太陽光発電施設のうち未だ稼働していない施設の買い取り価格を大幅に減額する方針を経済産業省が発表しました。
同省の審議会で2018年10月15日、了承されました。
これは、事業者の利益ばかりが膨らむ事を防ぎ、国民負担を出来る限り抑える事が狙いであると思われます。
FIT制度は2012年度に導入され、12年~14年度の事業用太陽光(発電能力10kw以上)の買い取り価格は当初、1kw時あたり40~32円と高い設定でした。
しかし、その認定施設のうちの4割強に当たる2352万kw(17年度末時点)が未稼働の状態です。
対象者や措置についての詳細は、↓こちらの記事をご覧ください。
【2018年11月】
2018年11月8日、上記未稼働案件に対する対応に、下記文言が追加発表されました。
「運転開始期限を超過した場合は、調達期間を超過期間分だけ月単位で短縮すること。」
————————————————————————
11月21日、太陽光発電設備の未稼働案件に関する制度改正案について、JPEAの見解並びにアンケート調査結果が公開されました。
未稼働案件に関する制度改正案が施行された場合の影響について
FIT制度改正案が施行された場合、案件によっては買取価格の変更や買取期間の短縮等が行われ、太陽光発電事業者が影響を受ける可能性があります。
その影響についてのアンケート調査を実施しました。
出典:JPEA
回答事業者は29社 (調査期間11月2日~11月14日)、その中で影響を受ける可能性がある案件は113件。
その合計設備規模は約310万kW(平均27,500kW)、既に電力会社への工事負担金、地権者やEPCへの支払等で投資した金額は約1,350憶円にも上ります。
これらが未稼働となった場合、EPCや金融機関への違約金、地権者への賠償金等を支払わなければならずその総額は約1,210憶円と予想されます。
未稼働の理由
出典:JPEA
稼働が遅れている理由で最も多いのが「電力会社の系統連系予定日に合わせて予定を組んだから」が24件で、2番目に多いのが「林地開発等の許認可」が19件、3番目が「造成、建設工
事に時間を要するから」が16件でした。
その次に多いのが「地権者との契約」と「条例による環境アセス」がそれぞれ7件でした。
制度改正により稼働予定案件が未稼働に(件数への影響)
出典:JPEA
今回の制度改正案が実施されなければ、113件のうち、111件が稼働予定(稼働の可能性が確実、極めて高い、高い)との回答でした。
一方で、もし、今回の制度改正案が施行された場合、111件の稼動見込みの案件のうち92件が未稼働になる(稼働できなくなる可能性が確実、極めて高い、高い)との回答でした。
買取価格及び買取期間への影響
出典:JPEA
今回の制度改正案が実施されれば、買取価格、及び買取期間が変更される可能性が高いことも分かりました。
稼働出来なくなる理由
出典:JPEA
制度改正により稼働出来なくなる理由としては、「買取価格が変わるため」が51件と最も多く、「買取価格と買取期間の両方が変わるため」が49件で、「買取期間が短くなるため」は1件だけという結果でした。
稼働出来なくなる最大の要因が、買取価格の変更にあることが分かりました。
買取価格の変更により稼働出来なくなる理由
出典:JPEA
対象となる113件のうち、可動できなくなる理由は「造成費・土地代等のコストが高いため」が最も多い70件。
「系統接続費用(工事負担金)が高いため」「買取価格が変わると融資が受けられるなくなるため」と続きました。
買取価格が変わる理由(系統連系工事着工申し込み期限)
出典:JPEA
現状の買取価格が維持されるためには、系統連系工事着工申し込みを2019年1月下旬ごろまでに提出し、2019年3月末までに不備なく電力会社に受領される必要があります。
系統連系工事着工申し込みの提出が2019年1月下旬に間に合わない理由を聞きました。
出典:JPEA
現状の買取価格が維持されるための方策としては、系統連系工事着工申し込みの受領期限を延ばすことという回答が最も多く上がりました。
それでは、受領期限をどのくらい延ばせば良いのか聞いたところ、提出期限を2020年3月末日まで延ばせば75件中、54件が対応可能という結果でした。
出典:JPEA
エネイチが以前予想していた通り、反対の意見や期限の延長を希望する意見が出てきています。
【2018年12月】
資源エネルギー庁は2018年12月21日、事業用太陽光発電の未稼働案件に関する申請手続きのスケジュールを公開しました。
同月5日に発表した未稼働案件に対する新方針に基づくもので、系統連系工事の着工申し込みに関する書類仕様や提出期限を公表しています。
今回の措置では、2012~2014年度にFIT認定を受けた10kW以上の事業用太陽光発電(10kW以上)のうち、運転開始期限が設定されていない(2016 年 7 月 31 日までに接続契約を締結した)未稼働案件については、FIT認定案件ごとに電力会社に「系統連系工事着工申込書」の提出が必要となります。
提出期間、提出先については以下の通りです。
FIT認定出力2MW未満:2019年1月11日(金)~2019年2月1日(金)
FIT認定出力2MW以上:2019年1月11日(金)~2019年8月末目途
条例アセス対象事業:2019年1月11日(金)~2020年2月末目途
系統連系工事着工申込書は、特定契約を締結している買い取り事業者に提出します。
つまり、対象案件について契約を結んでいる買い取り事業者経由で一般送配電事業者に申込書を提出することになります。
詳細な提出先や提出方法は、各電力会社のWebサイトを確認の上、必要に応じて各買い取り事業者に問い合わせする必要があります。
地方経済産業局、JPEA代行申請センター等の経済産業省の各機関では受け付けていないそうなのでご注意下さい。
【追記情報】調達価格算定委員会、2019年のFIT買取価格の方針を発表
【2019年1月】
FITの買い取り価格を決める調達価格算定委員会が2019年1月9日に開催され、2019年度における500kW未満(低圧)の事業用太陽光発電の買い取り価格を2018年度の18円/kWhから4円引き下げ、14円/kWhとする方針でまとまりました。
その他の電源は決定を見送ったり、現行価格を据え置く事となりました。
委員からは、FIT法の抜本見直しを見据えた指摘が相次いだようです。
今後も最新情報を随時更新していきますのでお見逃しなく。
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